東京大学の受験から、一番身をもって感じたのは人ってやればできる生き物ということでした。
日本語を学び始めたのは来日3ヶ月前でした。日本に来た時、クラスメートの日本語能力に驚くばかりでした。N1を取った人、留学試験を受けた人、日本に住んでいた人とか、皆のレベルが高すぎて、私はついていけるかって毎日不安でした。その時は本当にほかのことを考えずに、毎日は勉強の繰り返しで、もっともっと背伸びしたい気分でした。
6月の留学試験の結果発表後、ちょっと安心したという気分で、怠け癖が出てきました。そのせいか、早稲田大学の受験は面接まで行けずに落ちました。この失敗を機に、東京大学の受験を試してみたいっていう気持ちが出てきました。本格的な準備を始めたわけではないが、少しずつ新聞、雑誌、テレビを通じてニュースなどといった情報を収集し始め、授業中に配った記事も集め始めました。。気になった情報をキーワードで1つのノートにまとめていました。また、昔のNHKスペシャルもダウンロードし、自分の視野を広げようとしていました。そうすることで、日本語力がアップしただけでなく、情報量が増えたことによって物事に対する見方も変わりつつありました。
そしてこんな生活が続いて、やっと東京大学の一次試験の合格通知が届きました。本格的な準備階段に入る時は前の自分に感謝と後悔の気持ちを抱いていました。感謝は準備していた情報、あるいは情報収集の仕方と習慣を身につけたことで、後悔は「まだまだ準備不足だ!!」ということでした。先生に12月から1月までの新聞をチェックしてくるように言われ、図書館に二日間を費やしました。読売、日経、朝日新聞をすべてチェックし、気になった記事をコピーして集めて、もう多分コピー代だけで千円ぐらいかかってしまいました。毎日くたくたでしたが、意外と充実感に満ちていました。入りたいっていう気持ちだけでなく、その毎日準備して成長を遂げつつある私が好きだったかもしれません。毎日 新しい情報が見つかり、世界が広がったように感じました。
理系の者として、小論文は本当に苦手で、1200字などを考えたら頭痛が出そうでした。小論文試験の前の一週間には本当に自分のすべてを燃やし尽くせっていう感じで、毎日午前二時頃起きて、小論文を書いて入力して、そして学校に行って、小論文をチェックしてもらって、また家に戻って情報を集めたり覚えたりして、もう夜十時、そんな生活の繰り返しの一週間でした。私が小論文を書き始めた時はちょっと遅かったため、最初は欠点だらけで、先生のダメだしにはパニックでした。情報量が足りない、自分らしさがない、高見の見物は不要、引き上げ、掘り下げできてないなど、本当に毎日ひとつのダメだしを直して、階段を上って行ったって感じでした。今振り返ってみると、よくぞ私は変われたものだなっていう感じでした。月曜日の泣きそうな気分が、金曜日になったら「いいね」がもらえるようになったことは自分が成長したっていう証ではないかなと思っていました。金曜日の最後、先生とのお話では、もう「科学の貢献」「科学が社会における意義」「なにを勉強したい」「科学とはなにか」みたいな原点のような問題ばかりでした。先生との長い議論の中に、実感したのは東京大学を受験することって子供からの夢、自分の初心に戻れ、考え出せっていうことではないかと思っていました。(もう一度、その感動をって感じ?)準備するにつれて、自分が成長しつつも子供になっていって、本当に科学者になるとか、世界を救うとか、そういう夢を見ることができるようになってきました。
小論文を終えて、一息つけると思ったら、本番はこれからでした。これまでの面接とは違って、いかに自分らしさをアピールするか、またどのように自分の小論文の不足を見出すか、人間力が問われる勝負って感じでした。面接の準備はこれまた苦労するもので、どんな問題も問われる可能性があるから、一つ一つを踏んでいくしかなかったです。先生のツッコミやダメだしにも慣れたもので、1つ問題点が出たらすぐに対応して、またチャレンジするようになりました。いつこんな力を身につけたのだろうと私は考えました。先生と相談したら、そうだよ、東大を準備していると本当に変わっていく、成長していくっていう感じだよということでした。
面接当日の午前中、最後の練習を終えて、先生は「合格通知をもらってこい」みたいな青春ドラマの セリフを言いました。本当にこれまでの自分を振り返ってみると、親はきっと「立派に成長したのではないか」と言ってくれるだろうと思っていました。今の自分になれたこと自体に意義があるのではないでしょうか。どんな結果が出ようと、悔いがないって言えるようになりました。力尽きて、くたくたでグランドに倒れて息を激しく付く時ってきっと充実感に満ちて、結果なんてもう気にしないやって感じではないでしょうか。
最後にどう書くかちょっと迷ったのですが、クラーク博士の言葉を引用させてもらいます。
「少年よ、大志を抱け!」
写真 壁紙館から